+++ 続・それぞれの風景 +++

    




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「アスラン!」
「?どうしたんだカガリ。会議は…」
「いまは休憩だ」
「だからといって代表がこんなところに顔を出すのは…」
「あーもう、うるさいな。いまは休憩だからい・い・ん・だ!」
(こういうところ、キラと似てるな)
「…何だよその笑い」
「あ、いや」
「どうせお子様だとか思ってるんだろ」
「自覚があるなら、大人らしく振る舞ってみたらどうだ?」
「ふん。体裁だけつくろっても仕方ないだろ、要は中身だ」
「まあ、それは認めるが…。体裁というのもそれなりに大切で…」
「って、だー!そういう話をしにきたんじゃないんだっ」
「?」
「今夜、仕事が終わったら時間あるか?」
「は?俺は特に何もないが…」
「ならうちに来い」
「はあ!?」
「じゃあな!」
「あ、おい、カガリ!……って、もういない」



「俺より、お前の方がよっぽど忙しいんじゃないのか…?」




























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「ラクス、お疲れ様」
「いえ。少しでも、残されたご家族の慰めとなればいいのですが…」
「うん、そうだね。二度とあんなことを起こさせないようにしないと、って気持ちも新たになったよ。プラントの人たちも同じじゃないかな」
「そのために、私たちも頑張らなければなりませんわね」
「ラクスは充分すぎるぐらい頑張ってると思うけど。…これ」
「え?」
「今日、バレンタインでしょ?追悼式典の後に不謹慎かな、とも思ったんだけど…いまを生きてる僕らは、それも大切にしないとって」
「………まあ、可愛らしいネックレス」
「気に入ってくれた?」
「はい!」
「よかった。やっぱり贈り物って緊張するね」
「ふふ、それは私も同じですわ」
「え?」
「キラ、もしよろしければ仕事が終わりましたら夕食をご一緒していただけませんか?」
「うん、喜んで」
「それから…新しい歌を、聴いていただけると嬉しいです」
「ほんと?楽しみだな」
「私もキラに何が贈れるか、考えたのですけれど…これぐらいしか浮かばなくて」
「すっごい嬉しいよ。幸せだな、って思う」
「キラ…」
「君と一緒にご飯を食べて、歌声に包まれて。すごい贅沢」
「…ありがとう、キラ」
「こちらこそ。ありがとう、ラクス」






























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「あーもう、こんな日に仕事とか最悪」
「お姉ちゃんさっきからそればっかり」
「何よ、あんただって普段ならボヤいてるじゃない」
「まあね。でも恋人もいないから、ボヤく権利すらないんだもん」
「…何よその顔」
「お姉ちゃんはいいよねー。恋人いるし、仕事とはいえ今日も一緒にいられるし」
「ちょ、メイリン!」
「メイリン、俺に何かデータ届いてるって聞いたんだけど」
「!」
「あ、シン。きてるよ、これ」
「サンキュ。?どうしたんだよルナ」
「べ、べっつに」
「そうか?」
「そういえばお姉ちゃんそろそろ休憩でしょ、行ってくれば?」
「あんたねえ」
「あぁ、ルナも休憩か。じゃあ何か一緒に食べる?」
「えっ」
「いってらっしゃ〜い」


「何だよルナ、ずっと不機嫌そうだぞ」
「別に不機嫌ってわけじゃないわよ」
「あ、そうそう。いつ渡そうか迷ってたんだけどさ」
「?」
「これ」
「何よ」
「そ、その、今日ってさ…いちおう、あの日だろ」
「?血のバレンタイン?」
「………間違っちゃいないけど、そういうことじゃなくて。ああもう、いいから開けろよ」
「何なのよいったい……って、これ、ヘアピン?」
「最近、髪伸びてきて邪魔だって言ってただろ。キラさんと入った店で、ルナの好きそうなの見つけたからさ」
「シン…」
「せっかく買ったんだから、大切にしろよな」
「………うん、ありがとう。ね、シン」
「ん?」
「私もね、一応チョコ用意してあるのよ」
「へ」
「オーブじゃそういうの流行ってるんでしょ?ラクス様に聞いたのよねー」
「いつの間に…」
「ほら、休憩時間は限られてるんだから早く!私の部屋に来て」
「え、ちょ」



























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「お、来たなアスラン」
「……どうやって休みをもぎとったんだ」
「頑張って仕事を早く片付けただけだ」
「それができるならいつも…」
「だから小言はなし!ほら、中に入れって」
「お前の家じゃないだろう」
「あ、いらっしゃいアスラン」
「…ミリアリア?」
「今日は子供たちとチョコやケーキを作る日なんだ。そしてその残り物に私がありつく!」
「…おい」
「たくさんあるから食べて。私も作りすぎちゃった」
「…君も作ったのか?」
「まあね。けっこう渾身の出来上がりだったから、写真とって送りつけてやったわ」
(誰にかは聞かないでおこう…)
「よしアスラン、まずはこれを食え!」
「え?…これは」
「トリュフだ」
「………これが?」
「か、形は不恰好だが味は悪くないぞ!」
「………あぁ、ちょうどいい甘さだな」
「そ、そっか、よかった」
「…ひょっとして、カガリが作ったのか?」
「うっ」
「一生懸命マーナさんに教わってたのよ〜」
「こ、こら!」
「そうか…忙しいのに、すまない」
「ここは謝るところじゃないだろ、相変わらずだなお前」
「……あぁ、そうだった。ありがとう、カガリ」
「…まあ、詫びの意味もあるんだ私としては」
「え?」
「その…アスランにとってはお母様の命日だろう?それなのに、墓参りもさせてやれなくて…オーブに縛り付けてしまっている」
「……そんなことを考えていたのか」
「だってさ」
「…プラントにある墓には、実際は母は眠ってない。だから、ここからでも祈りを捧げることはできるさ」
「…アスラン」
「それに、俺はいまを生きてる。両親を忘れることはないが、いまできるのは生きている者のためにより良い未来へ進むことだけだ」
「…おう」
「そのために、頑張るさ。このトリュフで疲れも癒されたし」
「そ、そうかよ」
「ふふ、幸せそうで良いわねー」
「ミ、ミリアリア!」


























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「た、隊長」
「ん?あぁ…シホか」
「式典、無事に終了いたしましたね」
「あぁ。見事な式典だった」
「さすがラクス様です」
「もちろんそれもあるが、俺たちが寄りかかっているわけにはいかない。むしろ、支えられるようにならねばな」
「はい」
「………それはそうと、チョコを渡しに来たのか?」
「えっ!?」
「その後ろに隠しているもの、そうかと思ったのだが」
「あ、は、はい、そうです。お約束しましたので」
「あぁ、楽しみにしていた」
「…!?」
「趣味を理解し合える部下を持てて、俺は幸運だな」
「………あ、はい。わ、私こそ、光栄です」
「…そういえば、この習慣の発祥の島国ではホワイトデーとかいうものもあるらしいな」
「…え、そうなのですか?私は知りませんでした」
「お返しをする日らしい。せっかくだ、俺たちも倣うか」
「は」
「来月、何か礼をしよう。何がいい」
「え、ええ!?そ、そんな、私はっ」
「遠慮するな。お前は本当によく働いてくれている」
「………え、えっと…そ、それでは…僭越かもしれませんが」
「言ってみろ」
「隊長と…食事、など…できたら嬉しい…です」
「俺と?」
「そ、その、隊長はいつもお忙しく、食事も仕事をしながらということが多いですしっ!たまにはゆっくりと食事をされるのもいいのではないかと…っ」
「シホ……」
「は、はいっ」
「………本当にお前は、部下の鑑だな」
(………喜んでいいところなのかしら)
「なら、休日に付き合ってもらうか」
「ほ、本当によろしいんですか!?」
「あぁ」
「あ、ありがとうございます…!」
「礼をするのはこちらなのだがな」




「お前ももう少しシホを見習って部下らしくしたらどうだディアッカ」
「……俺があんな風になったら気持ち悪いだろうが、色んな意味で」
「は?」
「ま、頑張ってこいよー」
「………お前、さっきから何を見ているんだ?」
「チョコ。………の写真」
「………………」
「蔑む目はやめろ!」










fin